肩のゼロポジションと野球の関係 専門医がはじめからていねいに

この記事は6分で読めます

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。。
SMCの記事をご覧いただきありがとうございます。

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投球フォームの基本中の基本として、
「肘を下げない」
ということをとりあげてきたシリーズも3回目になりました。
第1回、第2回をお読みでない方は、
ぜひ一度目を通していただければと思います。

第1回
投球フォームの基本 ほとんどの指導者がわかってないポイント

第2回
野球肩と野球肘の原因としての肘下がりをガチ理解!
ただ、お時間のない方は、この記事だけでも
肩関節のゼロポジションについて「何となく」という理解から
卒業していただけると思いますし、
ゼロポジションと投球フォームの肘下がりの関係をと
その見方をマスターしていただけると思います。

ということで、今回のテーマとなる質問から入ります。

「肘が下がるとはどこに対してどのくらい下がっていることなのか?」

曖昧な指導からの卒業

コーチ「肘が下がってるぞ!」

選手(んなこと言われたって・・・どんくらいだよ!?)

こういう指導してませんか?

もしこの一言で済ませてしまっているとすれば、
それは逆に混乱や不満を増やしているだけかもしれません。

それに対して、

スマートフォンでもなんでも、
気軽に動画とれる時代ですから、
その動画を見せて、

コーチ「〇〇(選手名)の場合は、この時の肘の位置が、
ここにあるだろ?
それが、ここにあると肩にも肘にも負担がかかりにくいんだ。」

というような説明ができれば、
選手はイメージしやすいですよね。

 

それには、どの程度下がっているのが問題なのか?
それはどこがどこに対して下がっているのがいいのか?

そういった点を明確にしておくことが大切です。

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肘が下がるとはどういうことか?

肘が下がるとはどういうことか?を明確にするために、
まず、いきなり結論からいきましょう。

 

それは、肩関節がゼロポジションよりも下がっている状態

これが肘が下がっている状態です。
これについて解説していきます。

肩関節のゼロポジションとは?

まず肩関節のゼロポジションというものについて
解説いたします。

 

肩関節のゼロポジションとは、
肩甲骨の肩甲棘と上腕骨が平行(=角度ゼロ)になった状態を言います。

こういう状態ですね。ゼロポジション

これがなぜ重要なのか?と言いますと、

2つポイントがあります。

  1. 肩の外旋可動域が高まる
  2. インナーマッスルのバランスが最もいい

【ゼロポジションの意義】1.肩の外旋可動域が高まる

これが、第1,2回目の記事で解説したことですね。

第1回
投球フォームの基本 ほとんどの指導者がわかってないポイント

第2回
野球肩と野球肘の原因としての肘下がりをガチ理解!

 

簡単に言うと、
肘がゼロポジションから下がっていくと、
外旋の可動域が狭くなっていきます。

そうなると、肩にも肘にも負担が増して、
野球肩、野球肘の原因になってしまうということでしたね。

【ゼロポジションの意義】2.インナーマッスルのバランスが最もいい

肘が下がって、ゼロポジションよりも低い位置にあると、
インナーマッスルの中でも
上の方にある棘上筋という筋肉に負担がかかることと、

肩を外旋させる筋肉のうち、
下についている小円筋が緩んで働かず、
上についている棘下筋の負担が強まります。

要はバランスが悪いんですね。

 

そうなると、
その負担が強いインナーマッスルを
傷めやすいということはもちろん、

インナーマッスルの役割である、
肩関節の安定化の働きが落ちて、
肩が不安定になるために、
肩全体の負担も強まってしまいます。

 

不安定な肩において、肩全体の負担が強まることは、
極端な例をイメージしてもらうとわかりやすいです。

つまり、投げるたびに肩が脱臼していたらどうでしょう?

もう投げられないですよね(笑)

以上の2つのポイントで、
ゼロポジションが重要なわけです。

 

 

しかし、ここまで強調しておきながら、
投球動作の中でゼロポジションを保持するのは、
かなり厳しいものであり、ある意味不自然とも考えています。

その理由は最後の方で述べますが、

そういった意味で、
実践的に肘を下げないというのは、
「できるだけゼロポジションに近づける」
ということになると考えています。

ゼロポジションの見分け方

では、実際にゼロポジションに近い位置に入っているのか、
それより下がっているかの判定はどうすればいいのでしょうか?

ゼロポジションの判定は難しい

この判定を難しくしているのは
ゼロポジションが
肩甲骨(肩の受け皿側)と上腕骨(腕の骨)の関係である
という点です。

なぜなら、上腕骨のみならず肩甲骨も動くから、
例えば、
「背骨の軸から腕が何度上がっていれば、
ゼロポジションである。」
とは定義できないってことなんですね。

 

つまり、肩甲骨が45°上を向いていたら、
腕が90°上がっていても、
実際、肩甲骨と上腕骨の関係では
45°(90-45)しか上がっていないことになります。

ちなみに、肩甲骨と上腕骨の角度で言えば、
だいたい100°くらいがゼロポジションになります。

 

 

ここで1つ知っておきたいこととして、

「肩甲上腕リズム」というものがあります。

これは肩を外から上げていく際に、
上腕骨が上がる角度と肩甲骨が上がる角度が
だいたい 2:1になるという法則です。

例えば、
腕を地面と平行に90°上げた時に、
実は上腕骨は60°だけ上がっていて、
肩甲骨が30°上がっているということです。
60:30 = 2:1
ということですね。

その法則に従うと、
ゼロポジションは150°(100°:50°=2:1)
になります。

であれば、地面から150°もしくは、体幹から150°腕が上がっていれば、
肘が下がっていないとなるのか?と言えば、
そう単純じゃないと考えられています。

なぜなら、野球の動作、特に投球動作は、
背骨も真っ直ぐではないですし、
反対側の肩甲骨も連動して動きますし、
投げる腕に遠心力もかかります。
そして肩甲骨や腕の動きは平面上の動きではなく、
3次元的なものですよね。

要素が多すぎて、
このシンプルな肩甲上腕リズム = 2:1
では説明がつかないのが現状です。

主観に頼り過ぎない

それでもやはり、
まずいちばん避けたいのは
主観に頼りすぎることです。

主観に頼りすぎるとは

「なんとなく肘が下がっているなぁ」

という感覚だけで判断することです。
これがまずいことは説明不要だと思います。

 

 

ただ、主観は大切です。
なぜなら、人の体、動きを見るときには、
すべてをデータ化することは
現段階においては不可能で、
客観視だけには頼れないのも事実だからです。

 

ですから、主観もぜひ鍛えていただき、
「あれ?肘が下がっているように見えるなぁ」

と感じたら、スマートフォンやビデオで
動画を撮影して、様々な角度から検証してください。

「肩-肩-肘ライン」を見よう

そして、動画を撮っていただいた時に
どこを見るかですが、

今最も簡便かつ信頼性が高いと思われるのが、

「肩-肩-肘ライン」と呼ばれるラインが、一直線かどうか?

というチェックポイントです。

 

 

この「肩-肩-肘ライン」は、
グラブ側の肩と利き腕側の肩と、肘のラインが、
腕がしなる頃からボールリリースまで、
一直線になっているかということで判定します。

肘が下がっている選手は、
一直線ではなくて、肘が「肩-肩ライン」より下にあります。

 

こちらに肘が下がってしまっている選手と、
下がっていない選手の写真と「肩−肩−肘ライン」の
画像を示します。
肩肩肘ライン

画像引用元:「肩と肘のスポーツ障害 診断と治療のテクニック」中外医学社

なぜ「肩-肩-肘ライン」が重視されるのか?

この「肩-肩-肘ライン」はご存じの方が多いと思いますが、
なぜこの「肩-肩-肘ライン」が重視されるのかということです。

おそらくですが、
この「肩-肩-肘ライン」が一直線でも、
肩関節はゼロポジションより少し低いと考えています。

 

それじゃあ、だめじゃんか!!

と、僕も思いますが、
まず、結論として、大雑把に言うと、

投げるって運動は複雑な運動だから、
「肩関節さん」のことだけ考えて、
ゼロポジションを維持するのは、かなーりキビシイ!

だから、せめて、せめて、
「肩-肩-肘ライン」は一直線に保とうよ!

 

ってことだろうと考えています。

 

もうちょっと詳しく解説しますと、

ゼロポジションは
「肩関節さん」(前回までで勝手に擬人化してます^^)にとって、
理論上は一番負担が少ない状態ですが、

複雑な投球動作において
その理想的な状態と現実の間に
ズレがあってもおかしくありません。

 

そのズレを作り出している一番の要因が、
「遠心力」だろうと考えています。

他の様々な要因を一度タナに上げますが、

体幹(骨盤、背骨を中心とした)のスピンによって、
腕に遠心力がかかって、
腕は伸ばされながら加速されていくわけですが、

両肩がそのスピンの円を描くわけですから
遠心力は「肩-肩ライン」の方向にかかると
考えるのが自然です。

そうなると、一番物理的に自然なのが、
「肩-肩ライン」上に肘が存在することです。

パフォーマンスが上がれば上がるほど、
つまり、球速が上がれば上がるほど、
遠心力が大きくなりますから、

たとえ、もうちょっと肘が高いほうが、
ゼロポジションであったとしても、
その遠心力に逆らって、
肘を上げるのは容易ではありません。

ですから、「肩-肩-肘ライン」が、
そういった点で、ある意味妥協点と言えると思います。
しかし、逆にその「肩-肩ライン」より、
肘が下がっているのは、
物理的にも自然ではなく、
どこかに異常があると考えるべきですし、
よりゼロポジションから離れますから、
当然、野球肩・野球肘のリスクが高まります。

そういった、複雑な複合運動である投球動作において、
肩肘の負担を強くしない肘の高さとして、
「肩-肩-肘ライン」がひとつの妥協点と捉えるべきと考えています。

まとめ

はじめからていねいにということで、
ていねいにお話させていただいたつもりですが、
いかがでしたでしょうか。

ここまでをまとめますと、

  • ゼロポジションが投げるときに肩の負担が少ない状態である
  • 遠心力があるのでゼロポジションを保つのは困難である
  • できるだけゼロポジションに近づけるために「肩-肩-肘ライン」をチェックする

というのがポイントになります。

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次回は、投球フォームの基本である
肘を下げないということにおいて押さえておきたいポイント、
「肘が下がっている場合に、改善する方法は何があるのか?」
について解説していきたいと思います。

ではでは!

第4回
投球フォーム 肘下がりを矯正する一番シンプルな方法

変わる快感クラブ野球

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