疲労骨折の症状と痛みから治療 予防法までをスポーツ医が解説!

この記事は13分で読めます

こんにちは、歌島です。

 

2015年の箱根駅伝において大活躍し、
新・山の神の称号を得た、
神野大地選手。

その後のさらなる躍進が期待されましたが、
不運にも2度の疲労骨折。

1回目は大腿骨、二回目は下腿骨の疲労骨折を負い、
同年の全日本駅伝大会において、
期待のアンカー対決に敗れてしまいました。

この疲労骨折については、
アスリートとして上を目指す選手、
またその指導者は熟知していなくてはいけません。

その大きな理由は、
予防と早期発見が非常に難しいこと。
そして、パフォーマンスが高い選手や
練習熱心な選手ほど受傷しやすいことです。
特に後者。

僕は常々「才能の差なんてくそ食らえ」
と言っていますが、
その才能の差は、やはり練習で埋めるしかありません。

しかし、練習すればするほど
疲労骨折の可能性が高まるのであれば、
「結局才能の差か・・・」となってしまいます。

ですから、ここで疲労骨折をどうすれば防ぐことができるのか。
それについての一案をお話ししたいと思います。

その前にまずは疲労骨折の
基礎的な知識を整理していきましょう。

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疲労骨折とは? まずは「骨折」について

疲労骨折とは
当然「骨折」です。

骨が折れています。

少し、蛇足かもしれませんが、
患者さんから聞かれることで、

患者さん「ヒビですか?骨折じゃないですか?」

歌島「ズレるほど折れてないので、ヒビのようなモノですね」

患者さん「ヒビならよかったー」

というような会話。

「まぁ、細かいことはいいかな・・・」と
説明しないこともありますが、実はヒビも骨折です。

ズレがない骨折をヒビと表現することがありますが、
骨折には変わりありません。

厳密には骨皮質という外側のカタいところ部分の
連続性(繋がり)がなくなった状態と言えます。

骨折を小難しく表現するとそうなるわけですが、

この
骨皮質の連続性がない

ということはしっかりと理解しておく必要があります。

だからこそ、無理をすれば
すなわち、関節の運動をしたり(固定しなかったり)、
体重をかけたりすれば、

その「ずれ」は大きくなっていくわけです。

しかし、もともとほとんどズレていない
「ヒビ」のような状態では、

「骨膜」というさらに外側の膜や
靱帯、筋肉、筋膜などが繋がっていて
同じ骨折でも骨折部分の安定性=ズレにくさ
があります。

これは非常に重要な視点で、

安定性がない骨折は
ギプスなどで固定しても徐々にずれてしまいます。
そうすると、骨の変形が残りやすく、
結果として痛みや関節の動く幅、方向が小さくなります。

また、骨がくっつかないというリスクも高くなります。

この安定性を評価して、
僕ら整形外科医は手術が必要か、
固定が必要か、体重をかけても大丈夫か、
などなどを判断していきます。

蛇足でしたが、骨折をより理解する上で大切なので、
ご説明いたしました。
ここで大切なポイントは2つ

1.骨折=骨皮質の連続性がない
2.骨折の評価で大切なのは安定性

疲労骨折とは?

それでは一般的な骨折と疲労骨折の違いは?
という観点から解説していきます。

ちなみに
○○骨折というものは、
疲労骨折以外にもいくつかあります。

せっかくなので、カンタンに整理しておきましょう。
(早く本題に移れよ・・・という方は、
下にスクロールをどうぞ・・・)

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開放骨折(複雑骨折)

これは最重症の骨折です。
小難しく表現すると、
外界と骨折部が交通している状態

もう少し噛み砕くと、
骨折部と皮膚の傷が繋がっている状態です。

傷の状態によりますが、
わかりやすい開放骨折は、
慣れない人は気分が悪くなってしまうと思いますが、
骨折している骨が、皮膚の外に露出しちゃっている状態です。

これは一目で重症なのがわかりますね。

この開放骨折がなぜ重症なのかと言えば、

1つは細菌です。

身体の中、特に骨の中は無菌状態です。

それが急に細菌がたくさんいる外の世界に触れてしまうので、
骨の中が細菌で感染してしまう恐れがあるのです。

その状態を「骨髄炎」と言って、
非常に治りにくい感染症です。

もともと無菌状態で免疫力が弱い骨の中に
菌が侵入してしまうと、
他の場所のように(例えば肺炎など)、抗生物質をつかっても、
治りが非常に悪いのです。

最悪、その足や手を切断しなくてはいけないこともあります。

2つめに皮膚から骨に至るまでの損傷です。

皮膚から骨の間にはたくさんの組織があります。

真皮という皮膚の内側の層があり、
その内側には皮下脂肪血管、皮神経
その内側に筋膜筋肉があり、
さらに場所によっては重要な血管・神経があります。
その内側には骨膜があり、骨になります。

その全てが損傷している可能性があるのが、
開放骨折ということになります。

ちなみに開放骨折=複雑骨折です。
多くの方が複雑骨折=粉砕骨折だと思っておられますが、
それは違います。

粉砕骨折

粉砕骨折はその名前の通り、
骨が粉々になってしまっている骨折ですね。

その逆で単純骨折といえば、
もともと1本だった骨が2本にポキッと折れた状態です。

ただ、骨折というのは、
そのように完全に単純に2本に分かれるというのはそんなに多くなくて、
実際は、3つめ(第三骨片)の骨のかけらがあり、
よく見ると4つめがあり・・・という状態になっています。

じゃあ、何個から粉砕骨折というのか?

というのは特に決められていません。
当然、粉砕具合が大きく、粉々であれば、
それだけ重症と考えていいでしょう。

関節内骨折

関節内骨折というのは、
骨折線が関節の中まで及んでいる骨折のことを言います。

だからなんなの?

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、これは大切なことなんですね。
1つめは関節というのはスムースに動くのが大切なので、
少しのズレも大きな問題になるということです。

関節の外側の骨折であれば、
1cmくらいずれていても、場所によっては、
何の後遺症もなく治ります。

しかし、関節の中は5mmズレると、
関節の動きはスムースでなく、
骨がくっついた後も痛みがあったり、
ゴリゴリする感じが残ったりします。

また、将来的には変形性関節症という、
軟骨がすり減った状態になってしまいます。

ですから関節内骨折の場合は、
できる限りズレをシビアに矯正して、
固定するために手術が必要になることが多いです。

2つめは、関節内環境の問題です。

骨がくっつくために一番大切なのは、
血流です。

血の巡りのことですね

骨がくっつくための栄養、材料を
血液が運んでくれるわけですね。

しかし、関節の中は非常に透明で透き通った関節液で満たされ、
血流が非常に少ない環境です。

そのため、関節の中の骨折は治りが悪いと言われています。

病的骨折

病的骨折というのは、その名の通り、
骨が病的に弱い状態になっていて、
ちょっとしたことで骨折してしまう
ことです。
骨粗鬆症による脆弱性骨折
骨粗鬆症で脆弱(弱く)になった骨が折れてしまうということで、
この病的骨折に入ります。

また、それ以外にも、
骨の腫瘍によって骨が弱くなって折れてしまうこともあります。

不顕性骨折

これはレントゲンでは見つけられない骨折のことです。

病院に行ってこう言われたことがあるかもしれません。

「明らかな骨折は見られないですね」

いやいや、「はっきりしろよ、プロだろ?」

と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、
「絶対骨折はないです」

とは言えないのは、この不顕性骨折があるからなんですね。

 
さて、失礼いたしました。
本題にいきます。
疲労骨折はこれらの特殊な骨折の中でも
よく知られた骨折で、イメージしやすいと思います。

骨も使いすぎれば疲労します。
その結果、折れてしまうということですよね。

それに対し、
一般的な骨折は外傷性骨折と呼んでもいいかもしれません。

つまり、1回の大きな外力が骨に加わって、
折れてしまうということです。

転倒してしまったとか、
強く手をついてしまったとか、
転落してしまったとか。

そういう外傷のエピソードがなく、

ただ走っているだけとか、歩いているだけとか、
通常の運動動作をしただけ(投げただけ)とか、
そういう時に折れてしまうのが疲労骨折です。

ざっくりとした定義としては、
健康な骨に弱い力がかかる場合でも、
同じ場所に繰り返し長期間かかり続けると骨が折れてしまうということですね。

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疲労骨折と外傷性骨折の症状・痛み・特徴で違いはあるか?

さて、その疲労骨折と外傷性骨折において、
症状、痛みなどの特徴で違いがあるのか?
ということですが、

まず第一に言えるのは、
疲労骨折の症状・痛みは弱いことが多い
疲労骨折の場合は、
一回の外力でボキッッッ!と折れてしまう訳ではないので、
痛み自体は弱いことが多いです。

「イテッ!・・・あれ?なんだろう」

という程度のことも多々あります。

また、そのほかでも外傷姓骨折では
折れた場所やその周りの組織が傷んで、
出血したり、炎症を起こすため、
皮下出血(内出血)や腫れが大きいわけですが、

疲労骨折の場合はそういった症状も
弱く、ほとんどないこともあります。

疲労骨折はほとんどズレない

疲労骨折はほとんどズレないというのも大きな特徴です。
大きな外力が加わっていないので、
折れたとしても、
「ヒビ」程度で収まっていることがほとんどです。

そのため、周りの骨膜や筋肉の損傷はほとんどなく、
骨折自体は安定しています。

疲労骨折は見つけにくい

以上のような特徴から、
疲労骨折は外傷姓骨折に比べ、重症ではありませんが、
見つけにくいということが言えます。

選手本人も、痛みや腫れが小さいので、
異常を感じても、すぐに病院に行こうとは思わない。

とりあえずマッサージを受けたり、
とりあえず接骨院に行ったりします。

しっかりした接骨院の柔道整復師であれば、
疲労骨折も念頭にまず病院に行くように指示します。

しかし、そうでない場合は、
結果的に診断が非常に遅れてしまい、
一向によくならないということになります。

そして、もともとズレていなかった骨折が、
徐々にズレてしまって、手術が必要になってしまう。
なんて、笑えない事態になってしまうこともあります。

また、ズレがほとんどないという特徴から、
疲労骨折の初期にはレントゲンでもわからないことがあります。

不顕性骨折というやつですね。

見つけにくい疲労骨折を早めに見つけるには?

まず疲労骨折を疑えるかどうか?

まず選手本人や指導者、トレーナーなど周りの人間が、
疲労骨折を疑えるかどうか?
ということが1stステップになります。

疑うことができれば、
痛みが軽度でも病院に行くはずです。

そのためにはこちらでお伝えしている知識がまず最低限必要になります。
それに加えて、
普通の筋肉や関節の痛みと疲労骨折の違い
というのをある程度理解することが必要です。

その1つの方法として、
「圧痛」という
押して痛みが出るかどうかについて
丁寧に調べることをお勧めします。

僕ら整形外科医もこの「圧痛」というのを
非常に重視しています。

要は「どこを押して痛いか?」

ということです。

当然のことながら、疲労骨折というのは、
その折れている骨を押すと痛いんですね。

ですので、骨を押すと痛いというのがスタートです。
どこに骨があるかというのは、
触ればカタい組織ですからわかりますが、
なにより解剖の本を片手に勉強しましょう。

しかし、以前解説しましたが、
皮膚から骨までの間にはたくさんの組織があります。

真皮から皮下組織、血管、神経、筋膜、筋肉、骨膜。

そのどれが傷んでいても、
押せば痛いわけですよね。

とすれば、どこで見分けるのか?

そのヒントは、
表からも裏からも押して痛いか?

ということになります。

骨が痛いのであれば、
その骨を表から押しても裏から押しても痛いはずです。

でも、表側の筋肉が傷んでいるのであれば、
裏から押しても痛くないはずです。

例えば、足の中足骨という骨があります。
この骨の疲労骨折を疑う場合、
足の裏から押して痛いことがわかっても、
足底腱膜などの炎症もあり得るわけです。

しかし、足の甲から押しても痛ければ、
それは骨を疑うべきです。

疲労骨折と外傷性骨折の治療法の違いはあるか?

ここまで疲労骨折の特徴を
一般的な外傷姓骨折と比較しながら
解説してきました。

一言で言うなら、
疲労骨折はより軽症のことが多いが、
見つけにくいので注意が必要。

ということになります。
それでは疲労骨折の治療のお話にうつります。

疲労骨折は安定していることが多い

なんどか述べていますが、疲労骨折は
骨折部が安定している、
すなわち「ズレにくい」ことが多いです。

そのため、治療も手術や、
徹底したギプスを長く骨がくっつくまでやったり、
松葉杖で完全に体重をかけないようにする
ということが必ずしも必要ではないことが多いです。

疲労骨折の場所や程度によりますが、
スポーツ活動を制限するだけでいいこともありますし、
体重をかけるのを制限する(荷重制限)こともあります。
もちろん、疲労骨折とは言え、
不安定と判断すれば、シーネ(副木)を当てたり、
ギプスを巻きます。

疲労骨折にも一部、手術が望ましいケースがある

一般的に疲労骨折は手術をしなくて治ります。

しかし、疲労骨折の定義を考えてもらうと、
本当にそれで大丈夫か?
と思うこともあります。

その定義は「健康な骨に弱い力がかかる場合でも、
同じ場所に繰り返し長期間かかり続けると骨が折れてしまう」
ということですが、

つまり、手術をせずに骨がくっついたとしても、
また、スポーツ活動を再開して、
同じ負荷がかかり続ければ、
結局、疲労骨折を繰り返してしまうのではないか?

ということです。

それであれば、その疲労骨折しやすい場所を
補強する意味で、手術したらどうか?
という考え方もあります。

また、骨折の場所によっては、
骨がくっつくのに時間がかかる場所があります。

その多くの要因は血流、
つまり血の巡りであることが多いです。

この骨がくっつくのに時間がかかるというのは、
スポーツ選手にとっては致命的になることがあります。

それは大会に間に合わないということであったり、
練習を長期的に休むことによるパフォーマンス低下であったりします。

そのため、早期復帰を目的に手術を行うこともあります。

ジョーンズ骨折

そういった、骨の補強や早期復帰を目的に
手術を行うことが多い代表例として、
ジョーンズ骨折(Jone’s骨折)と呼ばれる骨折があります。

これは足の甲の外側、
第五中足骨と呼ばれる骨の疲労骨折です。

サッカー選手に多いですね。

疲労骨折において一番大切なのは予防と予期

ここまで疲労骨折について理解いただくと、
やはり、重視すべきは疲労骨折しないこと、
つまり、予防になるわけです。

特に防ぐことが難しい外傷ではなく、
オーバーユースが原因ですから、
それであれば、うまく調整すれば予防できるのでは?

と思うのは当然ですし、
予防すべきです。

疲労骨折の最大の予防はスポーツをしないこと

最大の予防策は、
スポーツをしないことになります。

バカバカしい話ですが、
オーバーユースが原因なので当然の帰結です。

ただし、そんな解決策を求めている人は、
ほとんどいらっしゃらないので、次に移りますが、

1つ蛇足で追加します。

本当にスポーツをしなくて、安静にしていれば、
疲労骨折を起こさないか?ということです。

骨に負荷をかけなかったとすると、
身体はその環境に順応します。

そんなに骨は強い必要がなくなるので、
骨はどんどん弱くなります。

そのため、ちょっとしたことで骨折しやすくなるのです。

つまり、疲労骨折の予防の難しさと
その根本をご理解いただくために、
極端な例を挙げましたが、

実際はスポーツをまったくしない、
まったくの安静をすればいいとは言えないわけですね。

何事もバランスが大切!

という非常につまらない、シンプルな結論になっちゃうのですが、
本質とはそういうものですね。

さて、もうちょっと実用的な対策の話をしていきましょう。

疲労骨折の予防策 1 :予期して早め早めの対策を

疲労骨折の予防の難しさ

さきほど、疲労骨折の予防策はスポーツをしないこと。
なんてことを言いましたが、

当然、スポーツ選手はパフォーマンスアップのために、
たくさん練習をします。

練習量を疲労骨折を防ぐために減らすと言うことは
なかなか受け入れがたい方策でしょう。

そして、どれくらい減らせば防げるのかも、
個人差が大きすぎて言えません。

また、パフォーマンス、レベルが上がれば上がるほど、
骨にかかる負荷も強まるというのは、
あらゆるスポーツにおいて共通するジレンマです。

当然、レベルが上がれば上がるほど、
身体は強くなっていき、
骨の強度も例外ではありませんが、

骨は筋肉のように、鍛えれば鍛えるほど強くなる
というほど単純ではありません。

ある程度、負荷に順応しますが、
どんな負荷にもビクともしない強い骨は作れません。

むしろ、レベルが上がることによる、
練習量の増大と、パフォーマンス動作による負荷の増大のほうが、
影響は大きくなります。

例えば、ジョギングのスピードで10km走るのと、
マラソン選手が全力で10km走るのでは、負荷がまったく違います。

つまり、傷害予防とパフォーマンスアップのジレンマを
最もダイレクトに受けている怪我といえます。

だからこそ、この疲労骨折を
トップクラスの選手たちにおいて防ぐことができれば、
それは大きな一歩と言えます。

疲労骨折する前に休ませることができれば

疲労骨折の予防のために練習しないというのは
当然、現実的でないわけですから、
次に考えるのは、

疲労骨折を予期して、
疲労骨折する前に休ませて回復させる。

ということです。

これができれば、骨も適応して強くなって、
徐々にでも練習量も増やせるかもしれません。

しかし、果たして、予期などできるのでしょうか?

これは正直難しいです。
ですが、不可能ではない。
諦める必要はありません。

予期のために必要なことを考えてみましょう。

1.疲労骨折の好発部位を知る

疲労骨折がどの骨に起こりやすいか。
それを知ることは最低条件です。

スポーツ活動中、もしくはその後に、
その場所に痛みが走れば、
注意が必要と言えます。

以下に、各スポーツにおける、
疲労骨折の好発部位を記しておきます。

疾走やジャンプを繰り返すスポーツ種目における
疲労骨折の発生する身体の部分は、
下肢の体重がかかる骨、それはほとんど全てですが、

  • 脛骨(けいこつ)
  • 腓骨(ひこつ)
  • 大腿骨(だいたいこつ)
  • 骨盤(こつばん)
  • 中足骨(ちゅうそくこつ)
  • 足根骨(そくこんこつ)

などが代表的です。

その中でも走る、跳ぶという
多くのスポーツに共通する動作の繰り返しによって、
最も疲労骨折が起こりやすいのが

脛骨という骨です。

全疲労骨折の50%程度がこの脛骨に起こります。

脛骨とは、下腿を構成する2つの骨のうち、
太い方を指します。

弁慶の泣き所と呼ばれる場所や、
シンスプリントが起こる場所で知られています。

この脛骨は長い骨ですが、
大きく

  • 上(膝に近い方)1/3
  • 中(真ん中)1/3
  • 下(足首に近い方)1/3

の3カ所にわけて考えられています。

そのうち、上と下疾走型と言って、
長距離走の選手など走ることの多い競技の選手に好発します。

また、中1/3跳躍型と言って、
バレーボール選手のように
ジャンプを反復するスポーツにおいて生じやすいという特徴があります。

治療上の特徴としては、
疾走型脛骨疲労骨折は骨のくっつきが良く、2−3ヶ月のリハビリで復帰できることが多いです。
一方、跳躍型脛骨疲労骨折は、
骨のくっつきが悪く、
完治までに半年以上を必要とするケースもあります。

そのため、早期に競技復帰を目指す場合には
手術を選択する場合もあります。

下肢骨以外の種目に特徴的な好発部位としては、

  • 肋骨(ろっこつ):ゴルフ・ボート・野球
  • 肘頭(ちゅうとう):野球・やり投げ
  • 鎖骨(さこつ):剣道
  • 尺骨(しゃっこつ):ソフトボール

などが知られています。

2.骨が原因となる痛みかどうかを見極める

また、スポーツにおいては、
練習量が多くなればなるほど、
パフォーマンスが高まれば高まるほど、

身体に対する負荷は強まります。

その結果として、
身体のどこかしらが悲鳴をあげることは
ある程度致し方ありません。

それが、筋肉である場合もあれば、
関節の軟骨である場合もあれば、
靱帯である場合もある。

そして、疲労骨折のように骨である場合もある。

骨自体が悲鳴を上げているのかどうか、
つまり、骨が原因の痛みかどうか、
それを見極められれば、
疲労骨折を起こす前に休むという選択肢をとれるかもしれません。

しかし、疲労骨折を起こす前の段階で
果たして、それを見極めるサインがあるのかどうかは
未だ議論中です。

骨が折れるまではどんなに検査してもわからない。
というケースもあるのでは?
と考える人もいると思います。

しかし、人間の仕組みを考えると、
何のサインも発さずに骨が折れるという状態になる。
「それはない」と考えています。

かならず何らかのサインを出している。

それに気づけるか否か。
そこが勝負だと。

そのサインに気づくためには、
日々、我々整形外科医が行っている、
疲労骨折の診断検査の中で、
簡便なモノを習慣的にチェックすることがいいと思います。

ある部位(特に先ほど述べた好発部位)に、
痛みや、そこまでいかずとも違和感を感じた場合に、
以下の方法でチェックしてみましょう。

1.丁寧に「圧痛部位」を探る

これはこの疲労骨折についての記事でも
以前に述べましたが、

押して痛いのが、骨なのか、筋肉など他の組織なのか、
ということを見極めるには、
その骨をいろいろな方向から押すことです。

そして、あらゆる方向から押して、痛い場合は、
それは「骨が痛みの原因」
と考える根拠になります。

2.その骨を叩いてみる

「叩打痛」と呼んでいますが、
骨折があれば、その骨を叩けば痛いです。
当然ですね。

その骨折部を直接叩かなくても、
振動が伝わって、痛みが走ります。

3.骨にダイレクトにストレスを加える

骨にダイレクトにストレスを加えて、
痛みが出るかどうかを判断します。
例えば、大腿骨、すなわち太ももの骨の
疲労骨折の場合は

fulcrum testという名前がついており、
(※.Johnson AW, et al Am J Sports Med 1994)
図のように太ももの下に前腕をおいて、
膝を上から押すようにすると痛みが走ります。

疲労骨折のテスト※.整形外科臨床パサージュ 下肢のスポーツ外傷と障害 初版 中山書店

これはイメージしていただくとわかりますが、
大腿骨が曲がりそうなストレスを加えていることになります。

当然、疲労骨折やその前段階でもなんでもない、
健常な骨であれば、
この程度のストレスではびくともせず、
痛みも出ないはずです。

このようなストレスで痛みが出る場合は、
骨が危ないと判断できます。

この3つのチェックをして、
1つでも痛みが誘発されるようであれば、
やはり検査をするべきであり、
検査で疲労骨折がなくても、
このチェックポイントを全部クリアするまで
強度の強い練習は控える
というのが良いのではないでしょうか。

疲労骨折の予防策2:骨にかかる負担を分散させた練習メニューを

ここまでは、予防策1として、
疲労骨折を予期するという観点で解説してきました。

次に練習内容の工夫について考えてみたいと思います。

ランナーは走ることによって鍛えられる・・・
ピッチャーは投げ込みが何より大切だ・・・

よく言われることですよね。

確かにそれはそうだと思うのですが、
この1つの動作を繰り返すことは、
どうしても負担、負荷が偏ります。

結果として、負担が強かった場所が
限界を超えて、疲労骨折を起こしてしまう

その他、オーバーユースによる障害を引き起こしてしまう。

そう考えると、
練習量が多く、
パフォーマンスが高い選手、チームは、

負荷、負担の分散を真剣に考えるべきです。

例えば、マラソンなどのランナーの場合、
心肺機能や代謝機能を上げる、維持する
という目的であれば、

必ずしも「走る」必要はないわけです。

エアロバイクでも代用できます。

それによって、
荷重による下肢の骨に対する負担は大幅に減ります。

例えば、バレーボール選手の場合。
スパイカーであれば、やはり、全力ジャンプでスパイクを打つ。
これ以上の技術練習やパフォーマンストレーニングはありません。

しかし、その動作、そのパフォーマンスを分解すれば、
いくつかの要素に分かれます。

まず、ジャンプ力。

これは瞬発系の能力であり、
何度も何度も回数優先でジャンプすれば鍛えられるモノではありません。

筋力を高め、
その後、筋パワーを高める。

そういうトレーニングは一回の強度は高くとも、
回数は少なくなります。

また、強烈なスパイクを打つための
体幹から上半身のトレーニングは、
必ずしもジャンプする必要はありませんね。

そういった要素に分解して、
いかにジャンプの数を減らすか。

もしくは「ノージャンプデー(No Jump Day)」を作るか。

そういう観点が必要になってくるでしょう。

これは別にパフォーマンスを度外視した、
とりあえず傷害が防げれば、
とりあえず安全にスポーツができればいい。
という医師にありがちな視点からの提案ではないということは
おわかりいただけるのではないかと思います。

ぜひ、今回解説したことを踏まえて、
疲労骨折の予防を諦めず取り組んでもらえたらと思います。

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当サイト管理人の歌島は
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