眠りが浅い原因を改善する方法10選 スポーツ医師解説

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スポーツ選手やハイパフォーマンスを要求される仕事をしている人にとって睡眠の質は非常に重要です。量、すなわち睡眠時間も非常に重要ですが、睡眠時間を確保しにくいのが現代人ですので、必然的に質を求めます。

つまり、深い睡眠をすることで疲労回復、翌日のパフォーマンスを高めたいわけですが、どうしても睡眠が浅くなってしまう人が多いです。

ということで、眠りが浅い原因とその改善方法をご紹介していきたいと思います。意外と常識、定説と思われていたことも、別の考え方もあることがわかると思います。

こんにちは、整形外科医でスポーツメディカルコーチの歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

スポーツ選手は眠りが命

アスリートのパフォーマンスが睡眠の量に左右されることは証明されてきています。

ただ、パフォーマンスが向上するには、大量の睡眠を長期間続けないといけません。

睡眠負債の返済に必要な睡眠時間

Dement博士による
Clinics in Sports Medicineに投稿された論文
「Sleep Extension: Getting as Much Extra Sleep as Possible」

これには10時間睡眠 x 40日間でバスケットボール選手の明らかなパフォーマンス向上が見られました。

最近、「睡眠負債」という言葉がさけばれています。

これは睡眠の質や量が不足し、それによる疲労が蓄積することを借金に例えて表現しているわけですが、

この「睡眠負債」はちょっとした「寝溜め」くらいでは返済できないことがわかります。

この研究のように、10時間睡眠を40日続けられる人はなかなかいません。

そして、この10時間睡眠を元に戻したら、途端にパフォーマンスが落ちたというデータもありますから、「睡眠負債」おそるべし!です。

とすると、やはり、

眠りが浅い状態を改善し、

睡眠の「質」を高めたい!

そうなるのは当然ですね。

眠りが浅い原因に対する改善方法

今回はその睡眠の「質」を高める方法として、
睡眠の前の準備について
定説の検証をしてみたいと思います。

就寝前のアルコールは睡眠の質を下げる?

これは寝酒は意外とだめ!ということで話題にのぼりやすい定説ですよね。

実際、飲んだ日は早く起きてしまうという経験がある人は多いと思います。

アルコールは事実、睡眠の質を下げ中途覚醒を増やします。

しかし・・・例えば、

養命酒という14度もする健康のために飲まれているお酒

これを飲んで中途覚醒が減少し、寝付きと寝覚めもよくなったという研究が日本未病システム学会雑誌という東洋医学系の雑誌に投稿されていました。

アルコールの量や飲んだ時間によっては、逆にリラックス効果が睡眠にプラスに作用する可能性は十分あります。

 

日本酒1−1.5合程度は寝付きもよく、質も下げないと考えられていますが、
アルコールの代謝で肝臓が頑張る時間を考慮に入れて、

  • 1合程度なら1.5時間前
  • 2−3合なら3時間前には飲み終わるくらい
  • 寝酒ならホンの一口、二口

というような調整がいいと考えています。

寝る前には手足を温めるといい?

手足を温めるというのは感覚的にも良さそうですが、科学的にもオススメです。

ポイントは皮膚の体温と内臓などの深いところの深部体温です。

この皮膚体温と深部体温にはこのような傾向があります。

  • 皮膚温度:日中低く、夜間高い
  • 深部体温 :日中高く 夜間低い

つまり、
温度差:日中大きく、夜間小さい

と言えます。

このように自然な身体の体温変化を促し、人間本来の夜間眠るスイッチを押すことが良質な睡眠につながります。

つまり、夜間の温度差を小さくしていくことがポイントになるわけですね。

その視点からいくと、寝る前に手足を温めることで「皮膚温度を上げる」ということは科学的に睡眠のスイッチを入れることになります。

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寝る前の入浴は効果的?

体温の関係について説明しましたが、とすると、寝る前の入浴というのはどう考えればいいのでしょうか?

入浴・・・

よく「芯まで温まる」

なんて表現されますが、つまり深部体温も上がるのが入浴です。

とすると、
深部体温:日中高く 夜間低い

という睡眠のスイッチからすると、寝る前入浴は逆効果ですらありそうです。

 

ただ、結論から言うと、

入浴は上手に使えば、最高の睡眠のスイッチになります。

寝る直前にじっくり入浴して深部体温を上げてしまうのは逆効果ですが、

入浴で上がった深部体温はその後、休息にリバウンドで下がっていくということがわかっています。そのため、だいたい寝る90分前くらいに入浴して寝る頃にはリバウンドで深部体温が下がるタイミングになる

というのが上手な入浴の使い方です。

もちろん、リラックス効果は抜群ですから、副交感神経が優位になり、スムーズな入眠が期待できます。

逆に寝る直前に入りたいというときは、深部体温が上がらない程度に、
サッと入るか、シャワーにするか、足湯にするか

というのがオススメということになります。

冷え性は靴下を履いて寝るべし?

手足を温めて皮膚温度を上げるという意味では靴下を履いて寝た方が理にかなっているようですが、「なぜ」皮膚温度を上げるかというと、「深部体温を下げるための熱放散を起こしたいから」という

さらなる深掘りした理由を知ると、

靴下を履いて寝るのはNGと言えます。

靴下を履いて寝ると、熱がこもってしまって、熱放散がされません。その結果、深部体温が下がらずになかなか寝付けないために眠りが浅くなるということが起こります。

冷暖房は使わないほうがいい?

昔から言いますよね。
「寝るときはクーラーは使うな」
「寝るときは暖房は使うな」

と。

実際、クーラーをかけっぱなしで寝て、風邪を引いてしまった経験がある人もいると思います。

しかし、これはクーラーが問題なのではなく、寝ている間に深部体温も下がっているのに、さらにクーラーをきかせて、体温を奪いすぎているという状態のせいですね。

つまり、室温調整をクーラーでしているようで、できていないわけです。

起きていれば、寒く感じて、クーラーを切ったり、調節するでしょうが、寝ている間はそれができず、かなり身体に負担がかかった段階で起きる

ということになってしまいます。

しかし、逆もしかりで、まったくクーラーをきかせなければ、汗をかきすぎて、またまた熱放散過剰で深部体温が下がりすぎる

ということで冷暖房は使いすぎも使わないのも原則眠りにはよくありません。眠りが浅くなる原因です。

そのため、うまくタイマー機能も使って、絶妙な温度を保つことが大切です。

といっても、あまり神経質になり過ぎず、寝て数時間後に冷暖房を切って、それによる自然な室温変化には掛け布団で無意識の調整をしてもらう(寒ければかけるでしょうし、暑ければ剥ぐでしょう)というのが現実的だろうと思います。

寝るときは脳を冷やす?

昔から「頭寒足熱」というように、

末端である手足は温めて、
頭は冷やす

というのが健康の秘訣と言われてきました。

脳神経外科の領域でも脳の温度を下げることで脳を保護する効果があることは常識です。

寝るときに頭を冷やしたいとは思っても、頭を温めたいと感じたことがある人は少ないと思いますので、納得しやすい部分かもしれません。

具体的に脳を冷やすというのは枕の工夫がおススメです。

保温性の高い枕よりも、そば殻やプラスチックビーズなどによる通気性の良い枕がベターだと思います。

他にも冷えピタのようなおデコに貼るタイプの冷却シートもありますね。これも実感としては効果がありそうですが、

やはり重要なのは枕だと思います。それも、首までしっかりフィットした枕がいいです。

脳の温度を決めている大部分は脳を栄養する血液の温度です。そう考えると首の血管を冷やすことがポイントだとわかります。

 

逆に頭を直接冷やしてます頭蓋骨で覆われてますから、その効果はたかが知れています。

枕もいろんなところでオーダーメイドができるようになってきました。素材も選べるところが増えていますので、これを機会に素材もこだわって作ってみるのもおすすめです。

入眠前は「いつも通り」が基本

自律神経で言うと、リラックス側の自律神経である副交感神経を優位に持っていくことが入眠準備として大切です。

その準備の基本は、

「いつも通り」

です。

入眠前に何らかのチャレンジをしたり、ドキドキ、ワクワクするものを見たり、

という非日常は交感神経が優位になります。

そういった日常に潤いをもたらす活動は非常に大切で、そういうものがなければ、人生は昨日と同じ日の繰り返しです。

なので、ガンガンに昨日と、いつもと違うそんな何かを見たりしたりというのが大切なんですが、それは夕方くらいまでにしておきたいですね。

夕食後は質の高い睡眠のために、単調な作業や退屈なことをやるくらいがちょうどいいです。

思えば、学生時代の僕の子守唄はNHKの人間講座で、特に阿久悠さんのお話は
半端なく眠くなるので違う意味ですごかったです。

阿久悠さんの動画を見てもらうとわかりますが、あの独特のかすれ声と絶妙な間が、心地よい空気の振動として耳に伝わるのと、作詞という仕事に当時まったく興味がなかったという「退屈」が功を奏したのだと思います。
(阿久悠さん、申し訳ありません)

寝る前に運動してひと汗かくといい?

いつも通りと言っても、汗を掻くほどの運動を習慣化してもダメです。

これは交感神経が優位になりますので、寝つきが悪くなります。

身体を動かすコンディショニングケアであれば、寝る直前は寝っ転がりながらできるくらいの脱力スタティック(静的)ストレッチくらいにとどめておいた方がいいです。

もう少し集中したストレッチは寝る1ー2時間前には済ませるといいですね。

スマホやパソコンのブルーライトは入眠を妨げる?

ブルーライトは覚醒を促すということは科学的にもわかってきています。

ですが、それも程度問題で、この時代にパソコンもスマホも夜は禁止!

というのはなかなか現実的ではありません。

実際、寝る前にスマホをいじってたら眠れなかったという経験がある人もいると思いますが、同時に、

毎日寝る前にスマホをいじっているけど、不眠では全然ないという人も多いと思います。

ブルーライトを完全にゼロにしないといけないレベルのものなら、このスマホ時代に間違いなく不眠症患者さんは何倍にも膨れあがっているはずです。

特にスマホをよく使う年代の人たちです。

でも、もちろん、「若年者で不眠が社会問題に・・・」なんて、そんなことはありませんよね。

そこで僕としては、ブルーライトを過剰に浴びないという程度でいいと思っています。

例えば、部屋を真っ暗にして、スマホの輝度を最高にして長時間いじる。

これはわかりやすい過剰です。

部屋が暗くて瞳孔が開いているのに、スマホのブルーライトを強くして浴び続ければ、それは過剰です。

スマホをいじるなら夜は輝度を落とし、部屋もある程度の明るさを保つということが必要です。

翌日が早い日は早く眠ること?

もう一つ、そりゃそうだろと思われるという定説。

睡眠時間を確保するためにも、翌日が早い日は入眠時間も早めるのが当然と思うのですが、

実際はちょっとその日に1時間とか2時間早めに眠りにつこうと思っても簡単にはいきません。

むしろ、早くベッドに入ったけど、ねむれないことに焦ってしまうというケースが多いはずです。

これはオレキシンという覚醒物質が関与している可能性が指摘されていますが、

もう少し抽象度が高い意味でも、ホメオスタシスで説明できます。

いつもと違うことをやろうとすれば、それを逆にいつも通りに揺り戻そうとする力(=ホメオスタシスのフィードバック)がかかります。

特に睡眠のスイッチには「いつも通り」が大切ということはこれまでお話しいたしました。

ですから、「いつも通り」という意味で、翌日多少早い起床予定であっても、いつも通り眠りにつくのがいいと思っています。

もしくは、かなり翌日の起床時間が早いのであれば、少なくとも数日前から就寝時間を少しずつずらすようなそういう戦略が必要だろうと考えます。

まとめ

今回は眠りが浅くなる原因の改善策ということで、よく聞く定説を中心に解説していきました。世の中、何が正しくて何が正しくないのかわからないお話がどんどん増えていきますが、そんな今だからこそ、その背景にある科学的根拠やメカニズムに目を向けて、判断していきたいところです。

そんな判断に少しでも役に立てば幸いです。

今回のお話で取り上げたケースはこちらの本でも、より詳しく解説されていますのでよろしければご参考にされてください。

診察ご希望の方
当サイト管理人 歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師

川崎市立井田病院
景翠会 金沢病院
さくら通り整形外科

各非常勤医師

関東の複数病院において外来診療・手術を行っている。
ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

歌島のプロフィール
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