猛練習を積むことで自信になる・・・は時代遅れ スポーツ医解説

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なかなか疑う余地がないことかもしません。

「猛練習を積むことで自信になる。」

ということです。

 

しかし、僕はあえて言います、

「そんなのは時代遅れで、

猛練習の結果得られた自信など脆いモノだと。」

 

こんにちは、整形外科医でスポーツメディカルコーチの歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

選手を壊してもいいと猛練習を課す巨人の秋季キャンプ

先日、巨人の秋季キャンプのニュースを
やっていました。

高橋由伸監督に中畑清さんが
インタビューされている映像でした。

一部をご紹介します。(敬称略)

中畑 秋のキャンプって選手壊してもいいわけじゃん?

高橋 そうですね でもまだ誰も壊れてませんね

中畑 一番この選手を壊したいってのは?

高橋 一人上げるなら岡本ですかね

高橋 岡本は打つ方も守る方でも課題が多いので両方で壊します

この会話を2017年に聞けるとは、
野球界の闇を見た気がします。

驚きますよね。

巨人が選手を育成できない理由が
なんとなくわかります。

選手は機械ではない!

「秋のキャンプって選手を壊してもいいわけじゃん」

 

いやいや、

いいわけないじゃん!!

です。

 

もちろん、そのくらい厳しい練習をやる
選手の強化待った無し!だということ

を言いたいのはわかりますが、

それでもあり得ない発言です。

 

この「壊す」という発言、

また、

ケガを「故障」と表現する慣例

これには嫌悪感しかありません。

選手は機械ではありません。
故障したら修理すればいい…
修理しても直らなければ捨てて、
新しい機械を導入すればいい。

そうやって、選手を機械としえ扱う限り、

スポーツが人間形成の場として機能することは
難しいのではないでしょうか?

指導者のフィジカルに対する理論武装が必須

もちろん、ケガしないように、
愛護的に、
及び腰で、
大切に大切に慎重に慎重に育てる

というのも選手の強化には繋がりません。

 

だからこそ、指導者にはフィジカルに対する
理論武装が必須なはずなんですが。

「ケガをしないラインを見極めた強化」
「ケガの予防も兼ねた強化」

こんな当たり前の概念が
なかなか聞こえてこない残念さがあります。

 

 

 

 

ただ、高橋監督、中畑さんはの共通する想いとして、
巨人の若手をここで飛躍的に伸ばしたい
ということ

猛練習を積むことで、
乗り越えることで、
自信と実力をつけさせたいという想いがあるのだと思います。

ここで考えたいのは、

猛練習を積むことで実力がつくのか?

ということと、

猛練習を積むことで自信がつくのか?
ということです。

 

猛練習を積むことで実力がつくのか?

まず、
猛練習を積むことで実力がつくのか?
についてですが、
巨人がやっている練習をニュースで見た限りでは
なかなか厳しそうな印象です。

 
まず野手には1日1500スイングを課しているようです。

これは昔の巨人の黄金期を作った
伝説の秋季キャンプがあるらしいのですが、

そのときに1000スイングがノルマだったようで、
それにならっているようです。

 
猛練習と言ってもその定義次第だとは思いますが、

このように、ただひたすらに数をこなすという猛練習は
レベルが上がれば上がるほど意味がなくなります。

例えば、バッティングに課題がある野手の育成において、
秋季キャンプで取り組むべきはなんでしょうか?
1つは一番、実戦から離れた時期ですから、
ケガをさせるという意味の「壊す」ではなく、

これまでのパフォーマンスや型を「壊す」ということが
結果の出てない選手においては試したいことです。
創造的破壊ですね。

 

これはシーズン前やシーズン中はできないことです。

そういう意味では思い切ったフォームの修正や、
ウエイトトレーニングで強い負荷をかけるということが
メインになるはずです。
しかし、ただただ数をこなすスイングでは、
疲労とともに染みついたスイングが顔を現し、
結局、現状維持のパフォーマンスを強化するだけになってしまいます。

まぁ、1500スイングできる持久力はつくでしょうが、
それに何の意味があるかは不明です。

ですから、スイングのことだけ言っても、
むしろ、1スイング、1スイング、ビデオで確認しながら、
課題を意識して集中しながら丁寧にやるべきです。

ですから、1日中練習したとしても、
多くて500スイング程度じゃないでしょうか。

個人的にはフォーム修正の最初はたったの100スイングでもいいくらい。
だいぶ修正したフォームになれてくれば、
それをなじませるのに300-500スイングくらい
というのがプロレベルでも目安になるのではと考えています。

これはプロ野球選手を現場で指導した経験があるわけではないので、
なんとなくの目安ではありますが。

 
実際に巨人の秋季キャンプを生で見ているわけでもない
自分が生意気に、
ちょっと言いすぎかもしれませんが、
あなたのパフォーマンス変革への道においても、
考える材料になればと思います。

猛練習を積むことは自信になるか?

つぎは、
猛練習を積むことは自信になるか?

というテーマです。

結論からすれば、
多くの人の実感の通り、
自信になると思います。

「あれだけの猛練習に耐えたんだから、相当な実力がついている」

という自信ですね。
これは一見、根拠のある自信です。

 

ですが、あえて言わせていただくと、

正しくは
根拠のない自信です。

前回述べた通り、
質より量の猛練習は
そのツラさの割に実力に繋がりません。

「あれだけの猛練習に耐えたんだから相当な実力がついている」

は残念ながら勘違いであるケースが多いんですね。
そういう意味で根拠のない自信です。

しかし、自信としてより「強い」のは
根拠のない自信です。

根拠のある自信は、
その根拠が崩れれば自身も崩れます。

「これだけの猛練習に耐えられたのだから」
が根拠のある自信だとすれば、
相手がそれを超える猛練習をしたことを知れば、
自信は崩れ落ちます。
根拠のない自信は
相手からしても崩しようがありません。

「なんか知らんけど、あいつの自信はすごいんだよなぁ。」
「あいつの自信はどこから来るんだ?」

と言われるくらいがいいです。
これがまさにエフィカシー、
自分のゴール達成能力に対する自己評価です。

そもそも根拠ある自信と思ったその根拠も
自己評価に過ぎません。

 

「これだけの猛練習」
って自己評価ですよね。
別の人から見れば、たいした練習ではない
かもしれません。

そして何より、その猛練習自体が
あんまり効果がないかもしれません。
だから、根拠なんてなくていいし、
でも、自己評価ですから、
いい意味で根拠にできそうならすればいい。
ただ、自信をつけたいから、
その根拠作りに猛練習を積むのは
もったいないと思います。

 

質が伴う猛練習はどんどん積むべき

 

猛練習を積むことに対して
否定的な意見ばかり述べましたが、

本来は猛練習自体は
質が伴うか、
量を重視するに目的が理にかなっていれば、
むしろ、どんどんやるべきです。
そう言った意味では、
ソフトバンクホークスの工藤監督の
意識というのは見習いたいところです。

工藤監督は選手時代、ベテランの域に達して、
通常落ち目になってるところを、
もう一つピークの山を持ってきた印象があります。
1999年 工藤公康投手 36歳の年に、
11勝7敗 防御率2.38
パリーグのMVPを獲得してるんですよね。

 

 

この衰え知らずの秘密は
当時よく取り上げられていましたが、

工藤投手が自ら学んだことにあったようです。
それは食事のことから
トレーニングのことまで徹底していたようですね。

その姿勢が監督になっても表れているのが
こちらの2年前の記事です。

一部引用します。

11月4日、宮崎市・生目の杜運動公園にて実施中のホークス秋季キャンプに、日本シリーズ出場組15人が合流し、「鍛える秋」が本格スタートしました。
さっそく工藤監督は自身がメニューを考案した「強化練習」を実施。
通常練習後、3時間以上におよぶハードトレーニングに、選手たちはクタクタでしたが、工藤監督は「まだまだ序の口」と笑顔で語りました。

中略

その後も、バットを使っての肩の回旋運動やチューブを使った踏み込みトレなど、5種目を追加した工藤監督は「科学的に裏付けされたトレーニングってさ、見た目は地味だけど効くんだよね。本当なら3セットなんだけど、今日は2セットにしとこうかな」と意欲的。帰り際には、「地獄のトレーニングとか、鬼なんて言わないでよ。プロ野球選手ならやっとくべき普通の練習なんだから(笑)」と

(http://www.softbankhawks.co.jp/news/detail/12690.html)

これも結局、「猛練習」かもしれません。

でも、質を重視している猛練習であることが伺えます。
「科学的に裏付けされたトレーニングってさ、見た目は地味だけど効くんだよね。本当なら3セットなんだけど、今日は2セットにしとこうかな」

このコメントなんて
量より質を重視しているのが如実に表れています。
巨人が悪
ソフトバンクが正義

みたいなわかりやすい対比で描いてしまいましたが、
もちろん、巨人のような猛練習は
ニュースを見ると多くの球団で同じようなもんです。

ちらっとニュースを見た感じでは阪神も広島も
なんとなく似たり寄ったりでした。

巨人だって、他の球団だって、
専門のトレーナーもいますし、
たくさん学んでいるはずのコーチ陣が
しっかり考えてメニューを組んでいるはずで、

一概に「悪」とまでは言えません。
ただ、

冒頭でお伝えした
中畑さんと高橋由伸監督の会話と
2年前の記事の工藤監督のコメントでは

明らかに「猛練習」に対する意識の違いが
うかがい知れましたので、わかりやすい感じで対比いたしました。

診察ご希望の方
当サイト管理人 歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師

川崎市立井田病院
景翠会 金沢病院
さくら通り整形外科

各非常勤医師

関東の複数病院において外来診療・手術を行っている。
ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

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