ハムストリングス肉離れ 必ず知っておくべきことを専門医解説

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ハムストリングスの肉離れ、これは非常に多いケガですが、

僕自身、なんとか防ぎ「きる」メソッドを開発したい!
と強く思っています。

パフォーマンスが上がれば上がるほど、
そのリスクが高まるというのでは、
夢がありません。

まぁ、ある理屈では当然ではあるのですが、
それでも、なんとか防ぎ切りたい!

と常日頃考えています。

 

それに必要なのはハムストリングス肉離れの予防策は当然のこと、
一度経験した人に対する再発予防も大切ですし、

癖にならないようにするためにも
徹底した応急処置、治療が必要です。

そのためにハムストリングスの肉離れに対する
基本的な知識から理解していく必要もあります。

ということで、今回の記事はハムストリングス肉離れのついて
必ず知っておくべきことということで基本知識をまとめ、
さらに予防策・再発予防策についてもお話しいたします。

典型的なハムストリングス肉離れで離脱した大島僚太選手

ちょうど記事を書いているときは、
2017年サッカー東アジア選手権で、
日本を代表するJリーガーが
奮闘中です。

日本は北朝鮮と中国に勝って、
次の韓国戦に勝つか引き分ければ優勝という状態でした。
(結局、その韓国に惨敗した記憶しかの残らない大会でしたが)

初戦の北朝鮮戦は内容は相当イマイチで、
井手口選手の終了間際の決勝点が
唯一の救いだったわけですが、

中国戦は内容も大きく改善していました。

その中心にいたのが、
Jリーグ王者川崎フロンターレの10番、
そして今回の日本代表でも10番をつける
大島僚太選手でした。

彼はこれまで世代別代表でも注目されていましたが、

本当にボールコントロールが上手くて、
かつ、戦術眼に長けた選手です。

そして、今のサッカー界、
上手いだけでは上にいけませんので、
ストロングポイントとまではいきませんが、

運動量も守備能力も優れています。

 

僕の好きな選手の1人なので、
今回の活躍は嬉しく見ていましたが、

前半半ばに、
ミドルシュートを打つ瞬間に
ケガをしてしまいました。

見た感じは
右足でのミドルシュートでしたが、
左足を大きく踏み込んだ瞬間に
ストレッチされながら
踏ん張ったハムストリングスが
肉離れを起こしたような痛がり方でした。

その後のニュースでも
大腿二頭筋(ハムストリングスの外側の筋肉)の肉離れ
と報じられていました。

 

その後も左脚に荷重をかけられず右足でケンケンしてました。

辛いですね。

ニュースではアピール失敗によって
W杯は絶望と出ていました。

そこを覆す奇跡を期待したいです。

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ハムストリングス肉離れの応急処置は圧迫が一番大事

さて、このような肉離れは
特に応急処置が大切です。

筋肉の線維が断裂した時から
出血が始まります。

この出血が広がると
断裂した筋肉線維と筋肉線維の間が
広がります。

そのせいで治りが悪くなり、
治った後も再発しやすくなります。

 

そこで肉離れ後は特に
体重をかけない、関節を動かさない(筋収縮を極力避ける)、
ガッツリ圧迫する、アイシングする(止血目的)ということが大切です。

ハムストリングスの基礎知識

この太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)の多くは、
坐骨という骨盤から始まり、
脛骨もしくは腓骨という
膝下の骨にくっつきます。

ハムストリングスは二関節筋である

これは股関節と膝関節の
2つの関節をまたぐので、
二関節筋と呼ばれます。

これは大きな特徴です。

 

この太ももの裏側の筋肉は
股関節を伸展(太ももを後方に動かす)し、
膝関節を屈曲させます。

逆の動き、すなわち
股関節の屈曲(太ももを前に動かす)と、
膝関節の進展で
太ももの裏側の筋肉はストレッチされます。

 

もう1つの特徴は、この二関節筋が少なくとも3本あるということです。

それは大腿二頭筋の長頭と半腱様筋、半膜様筋のことです。

 

この3本に大腿二頭筋短頭が単関節筋として1本あります。

太ももの前側の筋肉である
大腿四頭筋は
その名の通り4本の筋肉からなるわけですが、

二関節筋は大腿直筋の1本のみです。

太ももの裏側の筋肉である
ハムストリングスの特徴として、

二関節筋が4本中3本もある
というのは押さえておきたいところですね。

二関節筋は負担がかかりやすい

二関節筋というのは2つの関節をまたいで走る筋肉
ということで、

ハムストリングスの場合は股関節と膝関節
ということになります。

この2つの関節を動かすための筋肉ですから、

例えば、股関節が屈曲しているときに
膝を屈曲する場面とか、

膝が伸展しているときに股関節を伸展する場面とか、

様々な2つの関節の状態、動きの組み合わせでも
力を発揮しないといけません。

それゆえ、二関節筋は負担がかかりやすく、
常に緊張しやすい筋肉と言えます。

また、ハムストリングスがストレッチされるときは、
股関節屈曲 + 膝関節伸展ですが、

この2つの動きが同時に瞬間的に行われたとすれば、
急激に伸ばされてしまうことになります。

足し算ですよね。

要は二関節筋はそれだけで負担がかかりやすく、
それゆえ肉離れを起こしやすいということが言いたいわけですが、

 

さらにその二関節筋の特徴を持つ線維が、
4本中3本もあるというのが
肉離れの起こしやすさをさらに高めます。

 

その3本も多少なりとも走る方向や
筋線維の長さなどが違います。

そのため、股関節、膝の回旋角度、屈曲伸展角度などによって、
負担がかかりやすい線維が違ってきます。

 

そのため、あらゆる場面で、
何かしらの二関節筋線維にストレスが強めにかかっている
と言ってもいいわけです。

「二関節筋が4本中3本もある」

この特徴がつまり、
ハムストリングスが肉離れを起こしやすい理由になっているわけです。

だからこそ、ハムストリングスの肉離れを
防ぎきることができれば、
他の肉離れも防ぐ方法論になり得るのでは?とも考えています。

ハムストリングスが股関節をまたぐことの不幸

それは二関節筋の1つが
股関節であるということです。

股関節の特徴の1つとして、
可動域が非常に広いこと、
そして、回旋運動という要素もあることがあります。

股関節の回旋運動は
膝前面が外側を向く外旋と、
膝前面が内側を向く内旋がありますが、

 

 

この内旋、外旋運動で
ハムストリングスの筋線維はねじられることになります。

伸縮性が高い筋線維も
さらにねじりのストレスが加わると
肉離れしやすくなります。

ねじり要素を考えればストレッチもバリエーションが必要

このねじり要素まで考えての
肉離れ予防策を述べている人は少ないので、
もしかすると盲点かもしれませんね。

例えば、よくハムストリングスのストレッチをやると思いますが、
これもただ、股関節伸展+膝関節屈曲ということだけでなく、
股関節を内旋状態でやるバージョンと
股関節を外旋状態でやるバージョンと
その間のニュートラルでやるバージョン

これだけでも違ってくるのではないでしょうか。

ハムストリングスの肉離れ予防にはコンディションケアが重要

肉離れをするときは、
「あー、この無理な体勢は肉離れが起こるよなぁ」

思わせるような無理な体勢とは限りません。

 

今回のお話のきっかけとなった
サッカー日本代表の大島僚太選手のケースも、
通常のミドルシュートを打つ直前の動きで
起こってしまいました。

多少の力みはあったと思いますが、
通常の可動域を超える動きが強いられたわけではありません。

これはつまり、
筋肉のコンディションさえよければ肉離れは起こらなかった
と考えられるということです。

ですから、肉離れを防ぐ基本中の基本は
筋肉のコンディショニングケアにあるわけです。

ハムストリングスの危険信号の把握がポイント

極論、

筋肉に対するストレスがだいぶ溜まっていて、
そろそろ肉離れが危ない!

という状況が認識できればいいんですよね。

 

日々、練習前に体重計に乗れば、
各筋肉の肉離れ危険度がパーセンテージで表示される

そんな時代になれば防げるんじゃないかと思います。

しかし、そんな夢のような体重計はありませんので、
あの手、この手でコンディションを把握していく必要があるわけですね。

 

1つ注目しているのは、
エコー(超音波)の画像検査です。

 

毎日、練習前にハムストリングスの筋腹に対して
エコーで画像を記録して、何らかの変化が捕まえられれば
ということは考えています。

例えば、エコーでも血流のいいところ、悪いところが
わかるモードがありますので、
そこで変に血流が良すぎるところや、
明らかに悪いところがないかどうかをチェックする。

また、筋肉の硬さを測定するモードもありますので、
硬くなっていないかどうかをチェックする。

 

これは客観評価として再現性の問題がありますが、
膝の曲げ伸ばしで筋線維の滑りが悪いところがないかのチェック
なども可能性のあるチェックポイントじゃないかなと思っています。

ハムストリングス肉離れの予防トレーニング代表:ノルディックハムストリングス

今日はそのハムストリングス肉離れに対する
予防トレーニングの代表である
ノルディックハムストリングスについてです。

これですね。

肉離れをするときの筋肉のストレスである
伸ばされながら縮む
という状態をトレーニングする方法です。

伸ばされながら縮むというのは
矛盾しているようですが、
実際はよくあることです。

動かされる関節によって筋肉の長さは伸びるものの、
筋肉自体は踏ん張って力が入っている(=収縮している)
という状況で、

伸張性収縮とか言ったりしますね。

今にも肉離れしそうですよね。

 

この伸張性収縮に耐えうるハムストリングスを作り上げないと
肉離れを起こしてしまうわけですから、

このトレーニングが基本であり、実際に肉離れを減らしたという
データも出ていますね。

これによってハムストリングスの筋力も高まります。

膝の前十字靭帯損傷の手術で
半腱様筋腱を移植した人でもノルディックハムストリングスで半腱様筋が肥大したというデータもあります。

 

さらに肉離れに近いストレスをかけることは、
筋肉の耐久性を高めます。
これをメカノトランスデュースという働きで、
物理ストレスが身体の細胞を刺激して、そのストレスに耐えうる細胞に変化するということですね。

ただ、このノルディックハムストリングスは
スポーツ業界では相当有名なトレーニングですが、
まだ、トップレベルを含めて
ハムストリングスの肉離れは頻発しています。

そこでそのノルディックハムストリングスを
さらに少し掘り下げてみたいと思います。

ノルディックハムストリングスの注意点

それは、強度や時期を間違えると
このトレーニングがハムストリングスの肉離れの原因になってしまう

ということです。

強度を間違えない

例えば、無理して、たくさんの回数を
休息も十分取らずにやりすぎれば、

トレーニングそのもので
ハムストリングスの肉離れを起こすことだって
十分にあり得ます。

そのためハムストリングスの筋力と
耐久度によって、
そのトレーニング強度を調節しないといけません。

 

通常の筋力トレーニングのように、
限界までやって、
さらに、限界を超えてやって・・・
それで筋肥大を起こしていく

というようなやりかただと
間違いなく危ないです。

トレーニング時期を間違えない

もう1つは、トレーニングの時期です。

トレーニングを適切な強度でできているとしても、
このトレーニング後はハムストリングスの耐久度としては
むしろ弱くなっています。

ストレスがかかったあとですからね。

そのため、そのあとに、スポーツパフォーマンス、
特に試合やそれに向けたパフォーマンス的追い込み練習をやれば、
それはハムストリングスの肉離れを起こすために
追い込んでいるといってもおかしくない状態です。

ですから、このノルディックハムストリングスのようなトレーニングは
試合やその準備期間ではなく、
オフシーズンに集中してやるべきというのが基本原則です。

基本中の基本の注意点ですが、
今一度、おさらいしていただければと思います。

ノルディックハムストリングスのバリエーショントレーニング

ノルディックハムストリングスの
バリエーショントレーニングを紹介します。

ハムストリングスの特徴として
股関節をまたぐので、股関節の回旋運動の影響を受ける

ということを解説しました。

 

そして、ノルディックハムストリングスは
ハムストリングスの肉離れをする負荷に
似た状態を直接トレーニングすることで
耐久性を向上させるトレーニングであるとも解説しました。

 

この2点を考慮に入れると、
ノルディックハムストリングスにおいて、
シンプルに2つのバリエーションを
増やせるとことがわかります。

まずノルディックハムストリングスの姿勢を
後から見ると、
こんな感じですよね。

両膝も足も閉じて、左右がくっついている、
もしくは少しだけ間隔が開いている程度ですよね。

これは股関節が中間位、
ニュートラルな状態です。

 

 

そこで、ハムストリングスに対する
ねじりの要素を加えた耐久性向上のために、

股関節を内旋位(Internal Rotation)での
ノルディックハムストリングスを1つ目のバリエーションとします。

これを
ノルディックハムストリングスIR
と名付けます。

これは両膝はくっつけて、
両足を開いた状態で介助者に持ってもらうことで
内旋位をキープできます。

 

次に、もうおわかりのように
外旋位(External Rotation)での
ノルディックハムストリングス、

ノルディックハムストリングスERですが、

これは両膝は離して開いた状態、
両足は閉じた状態で介助者に持ってもらえば、
外旋位キープでのトレーニングになります。

ぜひ、オフシーズンのハムストリングス肉離れ予防に
活用してみていただくといいかと思いますし、

それだけでなく、

筋肥大にとって最も効果的な伸縮性収縮を使ったトレーニングで、
ハムストリングスを立体的に鍛えることができるので、
肉離れ予防だけでなくパフォーマンスアップにもお勧めのバリエーションです。

診察ご希望の方
当サイト管理人 歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師

川崎市立井田病院
景翠会 金沢病院
さくら通り整形外科

各非常勤医師

関東の複数病院において外来診療・手術を行っている。
ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

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