「痛み止め」スポーツ選手の正しい使い方と注射について専門医解説

この記事は5分で読めます

平昌オリンピックで2連覇を達成した羽生結弦選手の話です。

試合後のインタビューで、
痛み止めを飲んでいたこと
飲まないとジャンプも飛べない状態だったことを
話していました。

実は僕の発行しているメールマガジンで
この羽生選手の試合の数日前に

靭帯損傷のパフォーマンスへの影響は
「痛みさえなければ」あまりない

と言いました。

その痛みを
痛み止めを飲みながらやっていたということでしたね。

この痛み止めはロキソニンやボルタレンなどの商品名で市販もされており、
聞いたことがある人も多いかもしれません。
しかし、アスリートやスポーツ選手が使うということには賛否両論があるようです。

僕も痛み止めを処方したり注射する側の人間として、
お伝えすべきことがあると考えて記事といたしました。

こんにちは、整形外科医でスポーツメディカルコーチの歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

スポーツ選手に痛み止めは害しかない!?

巷には

アスリートには痛み止めは害しかない

というようなことを言う人もいるようです。

インターネットの検索の世界でも
こんな記事がありました。

トップ選手も陥る「痛み止め効果」の誤解

この記事で引用されている文献は2つ

1つ目は
サッカーW杯で痛み止めを飲んで試合に出場して選手が69%もいたということ

2つ目は
ランナーに痛み止めを飲ませてもパフォーマンスもその後の筋肉痛にも良い影響はなかったこと(こちらは原著を読みました)

この2つを引用して、

「繰り返しますが、痛み止めを服用しながらスポーツをすることは、メリットがほとんどないだけでなく、リスクが非常に高い行為です。やるべきではないのは明白ですね。」

という結論で締めています。

ちょっと理解が難しい論理展開です。

 

1つ目は使ってる人がトップアスリートでも多かったというだけ

2つ目は「もともとなんらかの痛みを抱えているわけではない」ランナーを対象に痛み止めはパフォーマンスと筋肉痛によい効果はない
という結果のみ

1つ目はまぁただの事実で、論ずる価値もありませんが、

2つ目はひどいです。

論文がひどいのではなく、この論文を引用してのこの結論がひどいんですよね。

当たり前過ぎますが、今回の羽生選手のように
痛みを抱えていて、
これではパフォーマンスに悪影響があるから
痛み止めを飲むわけで、

もともと痛みがない人を対象にやった研究は
通常のアスリートが痛み止めを使うときの
有効性を判断する材料にならないのは

それこそ明白です。

もちろん「痛み止め」には副作用がある

もちろん、痛み止めは副作用があります。
特によく使われるロキソニンのような非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)は

  • 胃腸障害
  • 腎障害
  • 喘息発作

などが代表的ですが、頻度が少ないモノも含めればたくさんあります。
それは薬の添付文書を読んだことがある人はわかると思います。

ただでさえ、ストレスで胃腸がやられやすかったり、水分調節で腎臓が頑張ってたり、最大酸素摂取量が重要なアスリートにとって、無視できない副作用も起こり得ます。

そういう意味で警鐘を鳴らすのは
大切です。

ただ、いたずらに害しかない!
と悪者扱いするのも違うかなと思います。

スポーツ選手が痛み止めを使うメリット

痛みがあればパフォーマンスに影響するのは当然のこと。

それは身体の生体防御反応として自然なことです。

痛みを自然と避けようと動作が変わってしまうかもしれませんし、
動作のスピードやパワーを抑えてしまうかもしれませんし、

逆に

痛みの恐怖に打ち勝つために、

思いっきり力んで正確性に欠けた動作やパフォーマンスになるかもしれません。

どう転んでもいい影響ではありません。

ということは、痛みを抑えることができれば、
通常のパフォーマンスを出しやすくなるのは当然ですから、

痛みがある選手が痛み止めを使うメリットは
十分あります。

スポーツ選手が痛い止めを「常用」してしまうのは良くない

しかし、

同時に、試合前や練習前の痛み止めを
「常用」してしまうのは避けないといけません。

どうしても大切な試合、大会の期間の
短期間の間だけ、痛み止めを使う

そう、今回の平昌オリンピックの羽生選手のように。

そうでないと、傷めた部位の回復は望めず、
どんどん悪くなる一方です。

痛み止めは治すわけではありません。

本来、痛み止めを飲まなければ痛い動作というのは、
傷めている部分に対する負荷としては
一般的には強すぎて、悪化させる原因と考えるべきです。

つまり、

痛みがある選手において
試合前の痛み止めはパフォーマンス低下を防ぐ効果がある

しかし、

常用することは患部の回復のチャンスを棒に振ることになる

という、当たり前すぎるお話です。

スポーツ選手が使う痛み止めの種類は?

どういう痛み止めを一般的に使うか?
ということですね。

試合直前に使う痛み止めです。

これは飲み薬と座薬、そして注射があります。

痛み止めの飲み薬、坐薬

飲み薬と座薬は主に

非ステロイド性消炎鎮痛剤と
アセトアミノフェン

の2種類があります。

非ステロイド性消炎鎮痛剤は
Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs
略してNSAIDsと言いますが、

ロキソニンやセレコックス、ボルタレンなどが代表的です。

この代表的な薬で言えば、
薬の強さ、切れ味の良さで言うと、

  • 1位 ボルタレン
  • 2位 ロキソニン
  • 3位 セレコックス

という感じですが、そこまで大きな差ではありません。

そして、副作用の強さも同様に

  • 1位 ボルタレン
  • 2位 ロキソニン
  • 3位 セレコックス

ということになります。

副作用としては

胃腸障害として、最悪、胃潰瘍になってしまうこと

喘息発作を引き起こしてしまう

腎臓に負担がかかってしまうこと

があり、

常用しないのであれば、これら、胃の病気、喘息、腎臓の病気を
持っていない人ならそんなに問題にはなりません。

また、アセトアミノフェンは
カロナールやコカール、アンヒバなどが代表的な商品名ですが、

NSAIDsにあるような副作用は
ほとんど起こりません。

しかし、肝臓には負担がかかりますので
もともと肝臓の負担が強い激しいスポーツは注意が必要です。

鎮痛効果の強さは
NSAIDsの方が強いですし、
アセトアミノフェンは炎症を抑える効果がない純粋な鎮痛剤です。

また、飲み薬と座薬で比較すると

座薬の方がダイレクトに腸から吸収されるので
効果が出現するまでが早く、
効果も強いという傾向があります。

また胃腸障害を予防するために
飲み薬は食後に飲むのが推奨されるので、

試合直前の使い勝手としては
座薬に軍配が上がるかもしれません。

座薬には抵抗がある人も多いと思いますが。

これらの特徴を押さえながら
痛み止めの使用について考えてみてください。

もちろん処方する主治医との相談が必要なのは
言うまでもありません。

試合前に行う痛み止めの注射

試合直前の痛み止めとして使う「注射」ですが、

これは主に直接患部に局所麻酔薬
注射することがあります。

薬の名前としては
キシロカインなど○○カインという名前がつくものが
ほとんどだと思います。

ときにステロイドの注射をしたり、
ヒアルロン酸の注射をしたりするドクターもいるようですが、
試合直前にやる意味は少ないでしょう。

ヒアルロン酸なんて、かなり粘稠度が高いので
注射によってしばらくは逆に痛みが強まることすらあります。

僕はあまりスポーツチームの試合に帯同したり
ゲームドクターとして試合に帯同することはしていません。

以前は大学アメリカンフットボールの複数のチームの
チームドクターとして試合に帯同していましたが、

試合だけに顔を出すようなドクターは
なんだかケガをするのを待っているようなスタイルに見えて、

「俺がやりたいのはこれじゃないな」と思ったモノです。

ただ、そのときの経験としては
局所麻酔の注射はときどきやりました。

局所麻酔は1–2時間は効果が続きますが、
それ以上になると随分と効果が薄れてきますので、
それも加味して注射を打つ時間を考える必要があります。

注射を打つ場所は要注意!

また、打つ場所によっては
神経を麻痺させて力が入らないなんてことも起こりえて、

実際、僕の後輩の注射でそのような状態になって
試合に出られなくて問題になったことがあると聞いたことがあります。

注射はその針差しの穴から菌が侵入するリスクもあります。

特にアメフトのような、時に泥まみれになることもあるスポーツや
汗まみれになるようなスポーツでは要注意です。

そのため、無菌状態を維持しないといけない関節内の注射は
行ってはいけないと考えています。

アスリートが薬を使うときは常にドーピングに気をつけて

オリンピックで必ず問題になるのはドーピング問題です。

意図して禁止薬物を使用するのは論外ですが、治療目的の薬がひっかかってしまうこともあります。

禁止薬物のリストはよく変更、追加されますので、
必ず主治医やチームドクターに確認しつつ使用してください。

まとめ

今回はスポーツ選手の痛み止めというテーマでお届けいたしました。少しでも参考になりましたら幸いです。

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診察ご希望の方
当サイト管理人 歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師

川崎市立井田病院
景翠会 金沢病院
さくら通り整形外科

各非常勤医師

関東の複数病院において外来診療・手術を行っている。
ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

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