ピッチングの体重移動 誰も知らない投球動作の基本

この記事は6分で読めます

ピッチングについてよくいただく質問に

「体重移動がだめ?」と言われても・・・
「そもそもいい体重移動」ってなに?

というものがあります。

これって良い質問だと思います。
野球の感覚用語、そしてちゃんと説明できる人が少なすぎる言葉の1つです。

常に何のために投球動作というものがあるのか?
という本質を前提にして考えないといけません。

誰も知らない・・・は言いすぎかもしれませんが(笑)、

なかなかちゃんとは語られない
ピッチング、投球動作の基本として

どういうものが「いい体重移動」なのか?ということを解説いたします。

こちらの動画でも解説しておりますが、
この記事では参考になる投手の動画も紹介しておりますので、

一番のオススメは動画を御覧頂いた後に、
記事をおさらい的に読みながら、紹介した名投手の動画をご覧いただくことです。

こんにちは、スポーツメディカルコーチであり整形外科専門医の歌島です。本日も記事を御覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう。

ピッチング(投球動作)の基本・本質を捉える

本質はシンプルなところから逆算していきます。

それは速いボールを投げるということ。

それはボールをもった手を離す瞬間にできるだけ速くスイングすること。

運動連鎖・キネティックチェーンから体重移動を捉える

そのために身体のエネルギーを順序よく途切れることなく、ダイナミックに手に伝えていくこと。これを運動連鎖、キネティックチェーンと言います。

これが投球動作の本質です。

 

そして、手から一番離れた足がそのエネルギーのスタートになります。

今度は投球動作のスタートから本質をもう少し詳しく見ていきます。

まず軸足一本で立ち、ステップしていきます。

 

このステップは別名並進運動と呼ばれていて、
身体をキャッチャーに対して横向きにした状態でほぼ平行にキャッチャー側に進んでいく動きです。

この動きで体全体が前に動きますから、ここで運動エネルギーが発生します。

 

この並進運動によるエネルギーを最終的なリリース時には手にすべて伝えるというのがやりたいことですが、そのためにはリリースまでずっと下半身が並進運動していたら、その運動エネルギーは下半身にあるままで全く伝わりません。

ですから、下半身の並進運動は急激にストップしつつ、上半身に伝えないといけないわけです。

それが前足の着地とともに始まります。

前足着地の瞬間に上半身にエネルギーを伝える

ここで、どういうふうに上半身に伝えるか?

ということを考えてみましょう。

例えば、下半身の並進運動をただただ前足着地でストップしてみてください。
身体の向きはキャッチャーに対して横向きのままです。

そうすると、上半身は前に急激にもっていかれますよね。
多分、よろめくと思います。

これは下半身の並進を急激に止めたので、そのエネルギーが上半身に伝わった状態です。

ただし、これではただ頭を加速しただけになってしまいますね。

バッティングと共通するスピン動作への変換

ですから、このように上半身に伝わったエネルギーを上半身としてはスピンに変換して、最終的な投げる動作である手のスイング動作に変換しつつ、伝えていかないといけません。

 

そこで前足着地とともに股関節が中心となり骨盤から上半身をスピンさせる力にも変換させていきます。

ここまでの原理って、バッティングも同じと言えば同じなんですよね。

並進運動のエネルギーを上半身に伝え、それもスピンに変換しながら

という点では。

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バッティングとピッチングの違いは遠心力

ただ、ピッチングとバッティングの違いは

加速させるのがバットの先端なのか、手なのか?ということなんですね。

これが結構大きな違いで、

加速させるのがバットの先端であるバッティングでは並進運動のエネルギーはそのほとんどすべてをスピンだけに変換したほうがスイングスピードは上がります。

 

作用反作用の原則からバットが前方にスイングされていく遠心力と釣り合うように頭は後ろに残っていたほうが、バットスイングは加速します。

それはヘッドステイバックと呼ばれたりもしますね。

これがスイング中にも上半身の並進運動は続いていて、頭が突っ込んだら、逆にバットは前に出てきません。

頭が突っ込んだスイングがデフォルトのホームランバッターってほぼいないですよね。ソフトバンクの柳田選手しかり、元ニューヨークヤンキースの松井秀喜さんしかり、僕的には歴代最強バッターだと思っているバリーボンズさんしかり。

しかし、ピッチングは違います。

ピッチングはいかにリリースポイントを前にするかが大事

そんなに遠心力と釣り合うようなことを考えないといけない、先が長いバットではなく自らの手を加速させないといけません。
遠心力は円の直径がながければ長いほど大きくなりますから、バットスイングでは遠心力との釣り合いがスイングスピードに重要ですが、手をスイングさせるピッチングはその遠心力はむしろ小さいわけです。

ですから、頭を残す必要はなく、むしろ、リリースポイントをいかにキャッチャー近くにするか?ということが打ちにくいボールにつながるわけですね。

実際、NHKのワールドスポーツ MLBでエクステンションという数値が紹介されていました。

エクステンションとはピッチャーズプレートからリリースポイントまでの距離のことで、要はどれだけリリースポイントを前にできているか?
を数値化したわけですね。

2017年シーズンは苦しんだ前田健太投手はポストシーズンはリリーフに回って大活躍しました。

実はその影に、このリリースポイントを前にということを意識して、実際9cmも前でリリースできていたというデータがあったようです。

ピッチングではエネルギーを上半身の前進+スピンに使う

つまり、リリースポイントを前にするためにもピッチングの場合は下半身の並進運動のエネルギーを上半身が前方に進むエネルギーとしても使ったほうが有利なんです。

だいぶ長くなりましたが、

ここまで解説した並進運動を上半身に伝える

という一連の動作が軸足から前足への「体重移動」になります。

とすると、体重移動と一口に言っても、
そんなん、歩いていれば一歩一歩体重は移動しています。それがいい、悪いって意味不明じゃないですか?

ですが、使い古されたこの言葉を解釈してみると、

いい体重移動とは、
むしろ、並進運動を前足でガツっと受け止めて、全てを上半身のスピンと並進に伝えられた状態
と言えます。

エネルギーを受け止めて伝える

これがいい体重移動になるわけですね。

まだまだ、抽象的でよくわからないですよね。

ピッチングにおける「良い」体重移動と「良くない」体重移動

なので、この原理を理解した上で、

どういう「体重移動」が良くて、
どういう「体重移動」が良くないか、

ということに移っていきましょう。

先に

良くない体重移動を挙げてみましょう。

下半身の並進を止めきれずエネルギーダダ漏れパターン

1番多いのは下半身の並進が止めきれずに、エネルギーが漏れてるケースです。
もちろん、前足は着地した時点で止まりますが、そこで、骨盤から軸足もしっかりと止まってスピンだけに移行しないといけません。

しかし、このように(↓は極端ですが)後ろ足が前足にちかづいてきてしまい、下半身も全体として並進運動が止めきれていないと、上半身へ伝わるエネルギーが減って、多くの場合は上半身が棒立ちになってしまいます。

ハンカチ王子こと斎藤佑樹投手はこの傾向があり、1番の欠点だと僕はみています。

ピッチングにおける良い体重移動の例

それに対して、
いい体重移動とは前足が着地してからは、しっかり下半身の並進が止まり、骨盤から下はスピンだけしている状態です。

その判別ポイントは
軸足とリリースの上半身です。

腕が最大にひねられるまで十分に軸足がプレート付近に残っているかどうか

そして、ここで、軸足も残って、完全に下半身の並進をストップできれば、上半身は反動で前方に倒れます。

その結果、リリースポイントが前に行くわけですね。

この体重移動が怪物的に上手いのは
僕が歴代ナンバーワンと思っているペドロマルチネスさんです。

 

動画を見てほしいんですが、驚くほど上半身が前に傾いた、倒れたリリースを迎えています。

 ステップ幅と「良い体重移動」の関係

このいい体重移動は
ステップ幅が広がれば広がるほど
難易度が上がります。

ペドロマルチネス投手はメジャーリーガーの中では広い方ですが、日本人投手はもっと広い人が多いですね。
下から投げろという指導の影響だと思われます。

その中でも楽天の則本投手や楽天時代の田中将大投手はステップ幅も広く、かつ抜群の体重移動ができていましたね。

さらに、以前、日本ハムのリリースエースとして君臨していた武田久投手はめちゃめちゃ広いステップ幅の中でも体重移動をなんとかやっていました。

しかし、普通は自分のフィジカルに合わないステップ幅で投げると、体重移動がうまくいきません。

試しに限界まで広くステップしてみてもらうとわかりますが、前脚に体重が乗り切らず、軸足との間でお尻が落ちるはずです。

これはまさに体重移動ができてないということになります。この典型的な状態はお尻が落ちちゃうということですね。前脚に乗り切れてないから、お尻が落ちちゃうわけです。

良い体重移動を身につけるためには?

では、いい体重移動をマスターするためには
どうしたらいいのでしょうか?

ステップ幅を狭める

まずお尻が落ちてしまう人のシンプルな解決策は

ステップ幅を狭めるということです。

ステップ幅と球速は必ずしも比例しません。
幅が広いと並進運動距離は稼げますが、
広ければ広いほど、骨盤のスピンや上半身の前方への倒れは効率が落ちます。

ですから、ステップ幅が広い=下半身を使えているという認識は改めないといけないかなと思います。

それよりも

しっかりと体重移動ができ、上半身が前に倒れ、リリースを前で離せているか?

これをよく見るべきです。

ただ、あまりにステップ幅が狭ければ、さすがに並進運動のエネルギーが少ないので
強い球が投げられないとなります。

良い体重移動に必要なフィジカル3要素

そのため、お尻が落ちないレベルのステップ幅で、かつ、軸足を後ろに残して、リリースを前にするために必要なフィジカル要素があります。

それは

  • 前脚の股関節の内旋可動域
  • 前脚のハムストリングスの柔軟性
  • 後ろ足の大腿四頭筋の柔軟性

この3点です。

このどれかがカタイと、
いい体重移動はできません。

一つ一つ見てみましょう。

前脚の股関節の内旋可動域

これがカタいということは、骨盤のスピンが十分できず、前の膝が外に割れて、エネルギーがここで漏れてしまいます。

このストレッチ法としてはこのような方法が一般的です。

前脚のハムストリングスの柔軟性

次に前脚のハムストリングス、つまり、もも裏の柔軟性です。

これがかたいと、上半身が前に倒れようとしても、その時に骨盤が前傾しなくて、猫背になって、腕に力を伝えられない状態になるか、前に倒れずに棒立ちになります。

 

このハムストリングスのストレッチの代表はこのジャックナイフストレッチです。

後ろ足の大腿四頭筋の柔軟性

後脚の大腿四頭筋、つまりもも前ですが、
ここがかたいと、ステップした後に骨盤が回旋しようとしても、軸足を残せません。かたいから軸足が前に引っ張られてしまうか、軸足が回旋せずに後ろからみるとガニ股のようなリリースを迎えてしまったりします。ガニ股リリースは骨盤のスピン不足を引き起こしてしまいます。

大腿四頭筋のストレッチとしては、このストレッチをお試しください。

まとめ

今回はピッチングの体重移動というテーマでお届けいたしましたが、結局、ピッチング、投球動作の本質的なこと、ある意味、最重要なお話ができたんじゃないかと思います。

少しでも参考になりましたら幸いです。

診察ご希望の方
当サイト管理人 歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師

川崎市立井田病院
景翠会 金沢病院
さくら通り整形外科

各非常勤医師

関東の複数病院において外来診療・手術を行っている。
ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

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